清廉の聖女と革命の鐘
クリスティーナがわずかに顔を上げると、そこにはいつもの微笑みがあった。
聖騎士の制服である真っ黒なコートに、金の“レイン”の紋様が刺繍された白のマントを羽織った青年。
青年は胸に手を当てて静かに頭を垂れる。艶やかな栗色の髪が、さらりと流れた。
「…ブルーノ」
「はい、聖女様」
クリスティーナは周りの巫女たちに目配せをして下がってもらう。支えを失った体は、まるで糸の切れた操り人形のようにすとんと倒れそうになる。だが、すぐさまふわりとブルーノによって横抱きにされた。
「お疲れさまです、聖女様。神殿に着くまでしばらくお休みください」
まったく重さを感じてない様子で、悠々と歩く彼は、クリスティーナに温かい笑みを向けた。
そしてクリスティーナはおとなしく身をまかせ、導かれるまま意識を手放した。