清廉の聖女と革命の鐘

___

「__まさか」
それを目にしたとき、クリスティーナは思わずそう呟いた。丸くあどけない二つの菫色の双眸がこれでもかというほど見開かれる。

世界で一番広い海洋にぽつんと存在する孤島。外周は絶壁が多く、ささやかな入り江しか持たない島に近づく船は皆無だ。

しかも、周りは聖女が作り出す結界によって外部からの進入を拒んでいる。

そんな島の、ごくごく小さな海岸に、奇跡的に流れ着く人間がいるだなんて!
(聞いたこともないわ…)
潮流の関係で外洋からの波さえ届かないと言われている。

少なくともクリスティーナは、人間に限らず、物ですら漂着しているのを見たことがなかった。

ともあれ。
うつ伏せで倒れている人影に恐る恐る近づいてみる。少し日に焼けた体には、いたるところに擦り傷があった。

かなり流されてきたのか、身につけている服や靴もボロボロだ。
彼女は人間の顔をのぞき込む。鼻筋の通った端正な顔、まだ幼さを残しているところを見るに、年はクリスティーナの2つか3つ上だ。
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