結構な腕前で!
「ウインク。できます?」

「えっと……」

 いきなり妙なリクエストに戸惑いながらも、せとかは、ぱちっと目を閉じた。

「あの、先輩。ウインクってのは片目です」

「そんな器用なことは出来ません」

 閉じていた目を開けて、せとかが言う。
 じゃあさっきのは誰だ! と萌実はパニックになる。

 顔は確実にこの顔だった。
 格好は制服だったけど、萌実が部室に着くまでに着替える余裕はあっただろう。

 そこで、あれ、と一点だけ違うところに気が付く。
 髪の毛。

 元々長めではあった。
 さらさらで色も入れていない、綺麗な黒髪。
 けど、そういえばさっき会った先輩の髪、括れるほど長かった?

 そのとき、ばたばたばた、と足音がし、すらりと障子が開いた。

「部長~。確保しましたよ~」

「明日のお菓子は水饅頭にして欲しいそうですよ~」

「「水饅頭なら早めに買っておかないと、ぬるくなってしまいます~」」

 綺麗なハモりと共に、全く同じ顔の女子が入ってくる。
 その真ん中には、憧れの先輩が両腕を掴まれて『確保』されていた。
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