結構な腕前で!
「……て、え? ええっ?」

 萌実は双子に確保されている先輩と、前で座っている先輩を交互に見た。
 同じ顔。

「やあ萌実ちゃん。無事着いたね」

 確保されているほうが、先に口を開いた。
 にこりと爽やかに笑う。

「せとみ。会ったんなら連れて来てあげればよかったのに。入部届だけ持ってくるなんて薄情ですよ」

 前に座っているほうが、確保されているほうに言う。
 えっと、と萌実は状況を理解しようと深呼吸した。

「あの、先輩。先輩って、双子……?」

「そう。僕はさっきも自己紹介したけど、部長の北条 せとか。そっちが裏部長のせとみ」

「う、裏部長……?」

「茶道部には裏の活動があってね。そっちの指揮官っていうか」

 淡々と説明していたせとかの目が、萌実を通り越した。
 え? と萌実も、せとかの視線を追う。

 そこには部屋の床の間にかかった掛け軸。
 いきなりそれが、ゆら、と揺れた。

「……えっ」

 気のせい? と掛け軸に少し近づこうとした萌実だが、その腕をせとかが掴んだ。

「新人を狙って来たか」

 低いせとかの声に、萌実はびくっとした。
 さっきまでのぼーっとした感じはない。
 鋭い瞳で、掛け軸を睨んでいる。

 その次の瞬間、いきなり掛け軸が裏から押されたように、大きく跳ねた。

「!!」

 顔を強張らせる萌実を、せとかが思い切り引き寄せた。

「いきなり新人いびりたぁ、感心しねぇな!」

 せとかに引き寄せられた萌実の横を、せとみが一足飛びに掛け軸に向かう。
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