結構な腕前で!
「で、せとかは土門の入部を認めたわけね」

 お茶を啜りながら、はるみが言った。
 土門が去ってから、せとかからも簡単に説明されたのだ。

「ま、戦力になるのであれば心強い人物ですからねぇ」

 茶菓子を食べながら、せとかがのんびりと言う。
 本日は練り切り。
 スタンダードな茶菓子だ。

「せとみが退部しちゃうかもよ?」

「そんなことになれば、敵にチャンスを与えるばかりか己の評価もダダ下がりですよ」

 にこりと爽やかに笑いながら、せとかはせとみの退路を断つ。

「まぁ最悪せとみが辞めたとしても、土門が育ってくれればいいし。柔術なので、あまり期待はしてませんが」

「そうねぇ。慣れたとしても、やっぱり毎回がっつり組み付いちゃ、ちょっと不利な気もするわねぇ」

「体調が悪くなって、柔道のほうにも影響が出てきたら考えるでしょう。ま、しばらく頑張って貰いましょうや」

 何てことのないように言い、せとかは新たに茶を点て始める。
 何気に怖いことを言っているような気がするのだが。
 魔に触れ続けると体調に変調をきたすのか。

「あの。前もちらっと言いましたが、私にその辺のサポートはできないんでしょうか」

 まだ満足に戦えているとは思えない萌実だが、祓いのサポートであれば萌実が一番できることなのではないだろうか。
 自分ももうちょっと役に立ちたい、と再度申し出てみるが、またもせとかの茶を点てる手がぴたりと止まった。
 しばしそのまま止まり、やがてゆっくりと、茶筅を回して身を起こす。

「南野さん」

 びしっと姿勢を正した状態で言われ、萌実も知らず背筋が伸びる。

「土門のこと、気になりますか?」

「え? えーと、気になる……ていうのは?」

「奴のために働きたいのですか?」

「いえ、そういうわけでは。単に、せとか先輩のカンフルであるなら、ああいった力のない人の回復剤にもなれるかな、と、ふと思っただけで」

「人のサポートをする、ということは、知らず自分の身を削ることにもなります。僕のカンフルに不満があるのならともかくですが」

「いえっ! とんでもない」

 慌てて萌実は両手をぶんぶんと振った。

「なら余計なことは考えないで、奴のことは放っておきなさい」

 静かに言い、せとかは点てた茶を萌実に差し出した。
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