結構な腕前で!
 今日のお茶はことのほか苦かった。
 納戸で着替えながら、萌実は小さくため息をついた。

 何だかせとかの機嫌を損ねてしまったらしい。
 自分の力もよく把握してない素人がしゃしゃり出たのが気に障ったのだろうか。

「全くせとかは。ほんと言い方ってものがわかってないんだから」

 はるみが帯を解きながら、少しおかしそうに言う。

「表情も豊かでないんだから、言葉に気を付けないといけないってのにね」

 にこりと言うが、萌実は浮かない顔のまま首を傾げた。

「でも、私ももうちょっと考えて物言ったほうがいいかもです」

「そうね。他の男に関することを、せとかの前で言わないほうがいいかもね」

 相変わらず笑みを浮かべたまま、はるみは意味ありげに萌実を見た。
 疑問符を貼り付けた顔の萌実に、少し身体を寄せる。

「萌実さんの力を、他の人に使いたくないのよ」

「えっと。それは、己の身を削ることになるからですか?」

「まぁね。ほら、普通に考えても、たくさんの人のサポートを一人でしてたら疲れるでしょ。まして萌実さんは、内在する力を使うんだしね」

 なるほど、だとしたら確かに考えなしの言動だったかも、と反省していると、今度ははるみが、あれ? という風に首を傾げた。

「ちょっと萌実さん。今の言葉で、何も気付かない?」

「へ?」

「せとか、萌実さんの力を他に使わせたくないってことなのよ?」

「あ、ええ。それは、えーと……ああ、言われてみれば、せとか先輩はちゃんと私を心配してくれてるんだなって……思っていいんでしょうか」

 ちょっと赤くなって言う。
 目の前のはるみは、少し渋い顔をしたが、すぐに大きく頷いた。
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