結構な腕前で!
「そうね。ていうか、それ以前に、よ」

 萌実が大きく首を傾げる。

「せとかは、萌実さんを独り占めしたいのよ」

「……えっ」

「他の男に、萌実さんが構うのが嫌なの」

「えええっ!」

「萌実さんは、せとかのことを好いてるのよね?」

「えええ~~っと! あの、そ、それは……」

 はるみにそういうことを言ったことなど、すっかり忘れていた萌実は、いきなりなことに狼狽えた。
 汗をだらだら流しながら萌実が固まっていると、はるみが、ぽん、と肩を叩いた。

「前に聞いたけど、でも萌実さんの態度を見てればバレバレよ。そもそもせとかを追って茶道部に入ったっていうところからして、もう並々ならぬ想いじゃない。ていうかそれ以前に、あのせとかに中学の時点で目を付けるっていうこと自体が凄いわ」

「え~と、いや、あの……」

「せとかの存在感のなさは、並みじゃないんだって。まして萌実さんは、同じクラスでもないばかりか、学年まで違うじゃない。そんな人に認識されるなんてこと、あるわけないのよ。しかも、そのせとかが中等部卒業してからも忘れなかったんでしょ?」

「……」

 何だかせとか的には、なかなか厳しいことを言っているような。

「例え同じクラスであっても、卒業したらあっという間に忘れ去られるような人よ。顔なんて誰も覚えてないんじゃないかしら。それどころか夏休みとか、長期休暇で忘れられるほどの人よ?」

 どんな人間だ。
 そこまで言われると、妖怪のような気もしてくる。

「せ、せとか先輩って、生きてるんですかね」

「そこは大丈夫。ちゃんと生きた人間よ。暖かかったでしょ?」

 真面目に答えないで欲しい。
 こういう場合は笑い飛ばしてくれたほうが冗談として取れるものなのだ。
< 117 / 397 >

この作品をシェア

pagetop