結構な腕前で!
「だからちゃんとせとかと添い遂げることもできるわよ。せとかに地獄に連れて行かれることもないわ」

「いやいや、先輩。添い遂げるとか、話飛躍しすぎ。せとか先輩、何考えてんのか全然わかんないし」

「そう? でもさっきも言ったでしょ。せとか、萌実さんのことは他に取られたくないはずよ」

「え、そ、そうですか?」

 思わず萌実の頬が緩む。
 昔からの付き合いであろうはるみが言うのなら間違いはなかろう。

「そうよ。だから萌実さんが土門くんに構うのが嫌なのよ」

「そ、そうだったんですかぁ」

 へら、と笑って、ぽりぽりと頭を掻く。
 もう先輩ったら、だったらもっとはっきり言ってくれないと、と内心浮かれていると、がら、と納戸の引き戸が開いた。
 茶道具を持ったはるかが入ってくる。

「全く。せとみはいつまでさぼるつもりかしら」

 ぶつぶつ言いながら、横の棚に道具をしまう。
 ちらりと萌実は、はるかを窺った。

「あ。はるみ、壺をそろそろ用意しないとだわ」

「じゃあ明日持ってくるわ」

「「早くせとみが出てきてくれないと、道場解放もできないわよ~」」

 ほぅ、と頬に手を当ててため息をつく双子は、いつもと同じ雰囲気だ。
 はるかは、せとみの気持ちに気付いているのだろうか。

 何となくせとかも気付いていそうだ。
 あのぼんやりさんが気付いているなら、誰もが気付きそうなものだが。

---でも、はるか先輩は何とも思ってないのかもな---

 土門に対する態度を見ても、せとみの目を気にする風もなかった。

---となると、なかなかどろどろになるかもな~---

 この狭い部室内で人間関係が泥沼になるのは避けたい事態だ。
 だがこればっかりは、どうしようもない。

 何せ別にはるかとせとみは付き合っているわけでもないのだから。
 はるかが誰を好きになっても仕方ないのだ。
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