結構な腕前で!
「部長~。確保しました~」

「ご苦労。では南野さんも行きましょう」

 どうやらこのまま道場に行くようだ。
 それにしても、意外にあっさり捕まったのだな、と思いつつ廊下に出た萌実は、そこの光景にぎょっとした。
 せとみはびくびくと、はるみの後ろに隠れている。

「さぁせとみ。道場の魔を一掃しなさい」

 ぴ、と扇で外を指す。
 物言いは静かだが、それがさらに恐怖を煽るようだ。

「い、いやでも。俺も着替えさせて……」

「そのままでよろしい。動きにくいわけではないのだから」

 ぴしゃりとせとみのお願いを遮り、とっとと道場へ連れて行く。
 ちなみにはるみは、一旦部室に来た後、せとみ探索を頼まれたようで、すでに袴だ。

「せとかが本気で怒ったら、せとみでも怖いのよ」

 はるみがこそっと、萌実に耳打ちした。
 そういえば、はるかやはるみがせとみ探索に出ると、必ずせとみは確保される。
 橘の双子が探しに来た、ということは、せとかの命令であろうことがわかるので、せとみも素直に従うようだ。

---確かに声を荒げたりしないだけに、じわじわ効きそう---

 せとみは多分直球だが、せとかはじわじわ精神的に追い詰めそうだ。
 にこにこしながら傷口に塩を塗り込みそう。
 せとみは怒られキャラだから、小さい頃からそういうのを嫌というほど味わってきたのかもしれない。

「はるみ、一人では大変でしょう。全部倒してから、皆で回収するので取りこぼしても大丈夫ですよ。攻撃メインでお願いします」

「あ、はい」

 道場に近付くと、すでに周りが不穏な空気で覆われている。
 足元から冷たい空気が這い上がり、踏み出すたびに、薄く煙が起こる。
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