結構な腕前で!
「これって、漏れてるってことですか」

 足元の煙をばんばん踏み倒しながら萌実が聞くと、鍵を南京錠に差し込みながら、せとかが頷いた。

「今にも扉が破られそうなほど、道場はお腹いっぱい状態です。全く、せとみがさぼりすぎるから」

 ぶつぶつ言いながら、せとかは南京錠を取った。
 そしてすぐに、萌実の腕を掴む。

「南野さん、こっちへ」

 言うが早いか、せとかは萌実を引き寄せる。
 同時に、ぶわ、と質量のある風が吹き出した。

 せとみが閂を蹴り上げたのだ。
 その途端に扉は内側から勢いよく開き、ぶわぁっと煙が吹き出す。
 間一髪、萌実は煙に飲まれることなく、せとかの腕の中に閉じ込められた。

「しばしせとみ一人で頑張って貰います」

「え、でも凄いですけど。大丈夫なんですか?」

「自分のケツは自分で拭かせますよ」

 黙っていれば上品な雰囲気なのに、と残念に思いながら、萌実はとりあえず近くに来た魔だけを、ぱこんぱこんと叩いて行った。
 せとかは全く協力する気なく、向かってくるものを避けている。

「くっそ……。おいせとか。安全圏に逃げてんじゃねーよ。ちょっとは手伝え」

 中で扇を振るいながら、せとみが言う。
 だがそれに、せとかは冷たい視線を返した。

「誰のせいでここまで増えたと思ってるんです。落とし前は自分でつけなさい」

---き、厳しい!---

 何だか顔を上げるのが恐ろしい。
 せとみもそれ以上口を噤んでいるところを見ると、せとかの怒りをひしひしと感じているのだろう。

 必死で魔を退治していくが、何せ多い。
 部屋を縦横無尽に駆け回りながら扇を振るうが、せとみの動きは徐々に鈍くなる。
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