結構な腕前で!
第二章
 部活というのは授業が全て終わった後の活動だ。
 六時限目を終えた萌実は、のろのろと山道を登っていた。

「ていうか、まじか。毎日この登山をしろって?」

 今はまだ初夏という季節なのでマシだが、真夏を思うと気が滅入る。
 耐寒登山もあり得るわけだ。
 目的の場所には憧れの先輩が待っているとはいえ、足取りは重い。

 そういえば、と萌実は遥か頭上に見える茶室に目をやった。
 中学の頃から憧れていた先輩は、どちらなのだろう。

 きちんと茶道をしているのは、せとかに見える。
 だが、やたらぼーっとした感じだ。
 中学のときは、それこそ遠くから見るだけだったから、ぼーっとしててもわからなかったのか。

 対してせとみはフレンドリーだ。
 軽い感じは否めないが。

「二年も経てば、髪も伸びるだろうしなぁ」

 あんなに憧れていた人がわからないなんて。

「まぁ、選択肢が増えたと思えばいっか。どっちも顔は同じだし」

 中学のときは、喋ったこともない。
 ということは、外見に惚れたということだ。
 外見は同じなのだから、性格を知って好きなほうを選べばいい。

「……て、彼女いない前提で都合よく考えてるけど、そうだ、大事なこと忘れてた」

 はた、と我に返る。
 いくら『こっち』と決めたところで、彼女がいたら何もならない。

「先輩、彼女いないのかなぁ」

「いませんよ」

 いきなり背後から声がした。
 うわぁ、と心の中で叫び声を上げて振り向くと、そこには先程から萌実の頭を占めていた先輩の姿。
< 15 / 397 >

この作品をシェア

pagetop