結構な腕前で!
 一方せとみは、町に降りてから萌実を甘味処に誘った。
 あんみつパフェをひとしきり掻き込んで一息つくと、せとみはずいっと身を乗り出した。

「ねぇ萌実ちゃん。俺と付き合わない?」

「……は? えええっ!」

 いきなりな告白に、萌実は食べていたきな粉餅を喉に詰まらせた。
 餅を詰まらすと危険だ。
 目を白黒させながら、萌実はお茶を飲んで餅を胃に落とした。

「ななな、何をいきなり……」

「だって萌実ちゃん、せとかが好きなんだろ? だったら俺でも一緒じゃん」

 衝撃発言。
 そういう問題ではない。

「違います! 造形が一緒ってだけで、せとか先輩とせとみ先輩は全然別人ですよっ!」

「そりゃあ、個体が違うわけだし。でもどう考えても、俺のほうがいいと思うよ? せとか、こんなべらべら喋らないでしょ。一緒にいて楽しい?」

「そ、それは……」

「せとかもいい奴だけどさぁ、いまいち何考えてんだかわからんでしょ。俺はまぁある程度はわかるけど、女の子に対する態度は、ほら、正反対っしょ。俺のほうが楽しいってのは自信あるな~」

 う、と萌実が口を噤む。
 確かにせとみの言う通りだ。

 せとかといても、楽しくないことはないが、せとみのほうが楽ちん、というのも事実。
 だがそれは、萌実の気持ちの違いも大きいと思う。

 せとかはやはり、好きだ、という自覚があるので、どうしても緊張する。
 せとみはそれがないので、気持ち的に楽なのだ。

「確かにせとみ先輩のほうが、楽ではあります。でも……せとみ先輩、はるか先輩は?」

「ああ……。だってはるかはイトコじゃん」

 軽く肩を竦める。
 あれ、と萌実はせとみを見た。

「本気ではなかったんですか?」

「う~ん……。だって冷静に考えてみてよ。何もそんな近場で収まる必要もなくない?」

「そういう問題ですか? 好きになったら関係なくないですか?」

「そう思ってたけどさ。やっぱ後々ね……。昔っから一緒だから、感情も勘違いってこともあるかな、と」

 そういうものだろうか。
 よくわからず、萌実は訝しげな顔でせとみを見た。

---はるか先輩が土門くんに靡いたから、無理やり他に行こうとしてるのかな---

 見た感じは無理しているようには見えないが、一度そう疑うと、せとみの笑顔も胡散臭く見えてしまう。

「まぁ考えといてよ」

 そう言って、せとみは伝票を持った。

「あ、払いますよ」

「いいって」

 慌てる萌実にウィンクを投げると、せとみはとっとと会計を済ませて出て行った。
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