結構な腕前で!
---そう考えると最低だ、この人---

 そう思う心が、視線に出てしまう。
 せとみが、あれれ、と肩を竦めた。

「あっ信用してないね? 俺だって自分の彼女のことは、ちゃんと守るよ~?」

「は? 何言ってるんです」

 まさかせとみはすでに萌実と付き合っていると思っているのかと、萌実は焦った。
 せとかが、じ、とこちらを見る。

「え、せとみ、どういうことよ?」

 驚いた顔で言うはるみに、せとみは再度、萌実を引き寄せた。

「付き合ってって、ちゃんと言ったんだ~」

「OKはしてない!!」

 叫ぶなり、せとみの腕を掴んだ萌実は、せとかがタイミングよく開けた扉の隙間目がけて、せとみをぶん投げた。

「え、ちょ、萌実ちゃ~ん」

 悲痛な声を残して、せとみが魔の巣窟に飛んでいく。

「ちょっと魔に揉まれて妄想を覚ましなさい」

 そう呟き、せとかはぴしゃんと道場の扉を閉めた。
 土門が驚いた顔で、せとかに詰め寄る。

「ぶ、部長殿っ。せとみ殿を一人で中に放り込んだら危険ではないか!」

「一人で浮かれる分には構いませんが、人を巻き込んだらいけません。現実を突きつける手っ取り早い方法ですよ」

「いやいや、しかしっ」

「大丈夫です。あれでもせとみは、こっちの活動の部長ですから」

 ちょい、と扉を指差し、せとかは懐から出した扇で、ぱたぱたと自身を煽いだ。
 そんなせとかを、はるみはちらりと見た。

「……ねぇ萌実さん。せとみと付き合うの?」

 居心地悪そうにしている萌実に、はるみがこそりと声をかけた。
 途端に萌実は、ぶんぶんと両手を振る。
 ついでに目視できない勢いで首も振った。

 萌実としては全力で否定するべきことだが、言葉にしたら酷い言葉になりそうで、口を開けない。
 なので身体で否定を示すしかないのだ。
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