結構な腕前で!
 ちょっと感心して言うと、せとかが土門を振り返った。

「じゃ、土門。仕上げは頼みます」

「お? お、おおっ!」

 中の惨状に、ちょっと引いていた土門が、我に返ったように言い、大分灰化している煙に突っ込んでいく。

「せとみ殿! のいてくだされ!」

「はぁっ? 何で俺がお前に譲らないといけないんだよ!」

 だだだっと突っ込んでくる土門に若干ぎょっとしながらも、せとみは牙を剥く。

「構いませんよ。一緒に投げ飛ばしてしまいなさい」

 無慈悲なせとかの指示に、せとみは慌てて飛びのいた。
 そのすぐ横をすり抜けた土門が、大部分灰化した煙に取り付く。

「うおおおおっ!」

 獣のような気合いと共に、でかい魔を持ち上げた土門は、身体を捻ってそれを思い切り畳に打ち付けた。
 どーん! と派手に道場が揺れ、衝撃で小さな魔もばらばらと畳に落ちる。

「うん、上等上等。無駄な体力も使わず、でかい魔と共に雑魚も巻き込んで一気に殲滅できる。素晴らしい」

 ぱちぱちとせとかが道場の入り口で手を叩く。

「さ、ではさっさと掃除してしまいましょう。土門はこれをどうぞ」

 ゴム手袋と箒を渡す。
 極力直で煙の塊に触れないように、とのことなのだろう。
 もう仕留めた後だが、やはり注意はしたほうがいいということか。

「でかい図体で、ひ弱だね~」

 けけけっと笑うせとみに、後ろからはるかが、どかっと蹴りを入れた。
 そしてそのまま土門に駆け寄る。

「ご苦労さま。さすがよね。私がついてるから、多少魔を触っても大丈夫だけど、一応手袋しておいてね」

「そうであるな。皆に迷惑をかけるわけにはいかん」

「でも気分が悪かったりしたら、無理しないで言ってね」

 何だかすっかりラブラブだ。
 ここがラブラブだと、さすがに双子の二重奏は出ないのだなぁ、と仲睦まじく道場内を掃除する土門たちを眺め、萌実はちらりと視線をせとみにやった。
 こちらは道場に胡坐をかいたまま、何をするでもなく不貞腐れている。
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