結構な腕前で!
「じゃあ着替えてこようか。……ん~……」

 掃除道具を片付け、はるみがきょろ、と周りを見た。
 土門とはるかを見、次いでせとかを見る。

「うーん……。せとか、ごめん、お邪魔虫するわね」

「まぁいいですよ。この時間に一人で帰すのも可哀相ですし」

 二人の会話の意味がわからず、きょとんとする萌実を促し、はるみは部室へと戻った。
 更衣室代わりの小部屋に入ると、入れ違いにはるかが出ていく。

「お先に~」

 廊下の先には土門が待っている。
 やれやれ、とはるみは萌実と中に入った。

「さすがにあの二人の邪魔は、できないというより、したくないわ」

「結局、付き合ってるんですか?」

「さぁ。でもまぁ、いい感じではあるんでしょ。付き合ってても付き合ってなくても、とにかくああいう雰囲気は苦手だわ。傍にいたら中てられそう」

 相手がせとみだと、そんなに思わないかもしれないんだけどな~、と呟くはるみを、萌実はちょっと意外そうに見た。

「でもはるみ先輩。せとみ先輩がはるか先輩を想うのはよろしくないって言ってませんでした?」

「うん。結局は親しさなのよ。土門くんとは、そんな親しいわけじゃないから気を遣う。その点せとみはそれこそ昔から知ってる分遠慮はないでしょ。三人でつるんでも、あそこまでラブラブではないから私も平気だと思うのよ」

「ああ……。確かに『彼氏』『彼女』ていう感覚は薄いかも。ずっと一緒だった人に、いきなりそんな気持ちが上がるわけでもないですしね」

 せとみだって、めちゃくちゃはるかが好き、というほどでもないのではないか?

「せとみは多分ね、ずーっと一緒で仲良しだったはるかを取られるのが嫌なの。いや、そりゃちゃんと好きではあると思うのよ? 結構あからさまに、私よりもはるか寄りだしね。はるかはお姉さん気質というか、せとみが末っ子気質でしょ? だから昔から、何くれとせとみを構ってきたのね。せとみもはるかに甘えるのが当たり前でさ。甘えるほうからしたら、その対象を取られるのは堪らないでしょ?」
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