結構な腕前で!
「はぁ。なるほど」

 言われてみれば、せとみの態度はなるほど、末っ子みたいだ。
 はるかとはるみは、萌実からするとさほど変わりはないように思うが。

「結構しっかりしてると思ってたはるかが、土門くんにはあれほど甘えるのも、ちょっと意外だったけどね。でもまぁ、頼られてばかりだったから、よけい自分が頼れる人に惹かれるのかもだけど」

「納得です」

「そう考えると、萌実さんもちょっと危険かもよ」

 不意にはるみが、萌実に顔を寄せた。

「普段はあんまり思わないけど、ほら、今日の初めとか、せとみ投げ飛ばしたじゃない。力的にもせとみを上回ってるしね。頼り甲斐がある、といえばあるかもよ。せとみ、気の強い人が好きなのかもだし」

「はるか先輩、そんな気強いですか?」

「せとみに対しては上からよ。そういうのに慣れちゃってるのね。言ってしまえばドMだわ」

 うげ、と萌実は内心引いた。

「その点せとかはドSかも。凄いな、双子でそこんところは両極端」

 顔が同じなのに、一方はドMで一方はドSて。
 何で中間がいないんだ。

「加えてせとみは惚れっぽくなってる。はるかを諦めるためもあると思うけど、ちょっとでも好く要素が見えたらすぐに好きになった気になってそう」

「つまり、私に構うのは一時のまやかしのため」

「の可能性は大きいと思うけど。でもそこから本気にならないとも言えない。だからね」

 一旦言葉を切り、はるみはちょっと面白そうに目を細めた。

「萌実さんがどうしてもせとかがいいって言うなら、確固たる意志を持って断らないと、しつこいかもよ?」

「うええぇぇ~……? いや、せとみ先輩のことだって、別に嫌いじゃないんです。なのであんまり邪険にするのも悪いかなぁ、と。せとか先輩よりも随分フレンドリーですし、緊張しない分楽しくはあるし」

 言いつつ着替えを終えて廊下に出ると、そこにせとかが立っていた。

「……まぁ僕はフレンドリーとは言えないでしょうね」

 ぼそ、と言う。
 どこから聞いてたんだ! と焦る萌実の後ろから、はるみが笑いながら口を挟んだ。

「自覚があるなら、何とかしたら?」

「自覚があるからって、どうこうできるものでもないです」

 特に何の反応もなく、せとかは靴を履いて外へ出る。
 外はいつものように夕闇が迫っている。
 ただでさえ山の中の帰路は結構危険だ。
 ……いろんな意味で。
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