結構な腕前で!
「ほ、北条先輩っ」

 今は制服姿だが、髪が長いのでせとかだろう。
 まだ六時限目が終わってすぐなので、せとかも今から部室に行くらしい。
 手には鞄と、風呂敷包みが持たれている。

「苗字だとどちらかわからないので、名前でいいですよ」

「あ、はい」

「もっともはるかたちはわからないでしょうから、苗字のほうが都合がいいかもしれません」

「はぁ」

「彼女らは、まず別々にいることはないですから」

「そうなんですか」

「なので適当に声を掛ければいいです。二人一緒に動きますし」

「そんな失礼な」

「気にしないでいいですよ。僕もわかりません」

 さらっと言われたことに、萌実は躓きそうになる。
 身内なのにわからないのか。

「危ないですよ」

 相変わらず淡々と、せとかが言う。
 掴み処がない。

 やっぱり自分の好きな先輩は、せとみのほうかなぁ、と思っていると、昨日せとみが教えてくれた分岐点(といっても道か茂みか、の分岐だが)まで来た。
 せとかはそのまま道を歩いて行く。
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