結構な腕前で!
「せとか、ちょっと本気になったの?」

 すっかり日が沈んだ夜道を歩きながら、はるみが横を歩くせとかに言った。

「そう見えましたか?」

「何気にデートの約束を取り付けてたじゃない」

「そう解釈して貰えましたかねぇ」

 ふふふ、とせとかが笑う。

「せとかもさぁ、ちょっとは素直になれば? せとみに萌実さんを取られそうで焦ったんじゃないの?」

「……どうでしょう」

「のんびり構えてると、ほんとに取られるわよ」

「いや、こればっかりは南野さんの気持ちもありますし」

 ふぅん? とはるみはせとかを見上げた。
 てっきり萌実の気持ちには気付いていると思っていた。

 気付いていなくても、部室を出る前の会話を聞いていれば、ある程度は勘付くと思うのだが。
 そんなに前から聞いていたわけではなかったのだろうか。

「ま、私はせとみが他に目を向けてくれれば、それでいいのよ」

「その考えには賛成なんですがね」

「その相手が萌実さんっていうのが気に食わない?」

「う~ん、そうですねぇ……。安易に思えるんですよ」

「ああ……そっち」

 せとかの言葉に、はるみも頷いた。
 ちょっと前まではるかを追いかけていたせとみが、はるかが他の男に掻っ攫われた途端、同じ部活の後輩にちょっかいをかけ始めた。
 丁度そこにいたお手軽な対象に切り替えたようにも見える。

「まぁ、はるみに乗り換えるよりはマシですが」

「それこそ代わりじゃない。あからさますぎる」

「もっともそうなると、単にはるかの外見が好きだった、ということになりますね」

「そうね。中身は全く違うもの」

「どっちにしろ、はるかのことも含めて様子見ですね」

---せとかと萌実さんのこともね---

 ふぅ、と息をつくせとかを見上げながら、はるみはこそりと心の中で付け足した。
< 163 / 397 >

この作品をシェア

pagetop