結構な腕前で!
「普通の花粉症よりも酷くてね~。まぁ鼻水とか目が痒くなるとかだけなんだけど」

 だからマスクをしていたのか。
 納得した萌実の横で、せとかがちん、と鼻をかんだ。

「だけ、といってもしんどいんですよ。鼻水は啜っても引っ込まないし。滝のように出るんですから」

 マスクがなくなったため曇りが取れた眼鏡の奥は、滂沱の涙が溜まっている。
 好きな人のこのような姿、引く人もいるだろうが、幸い萌実はきゅんとするほうだった。

「大変なんですねぇ。でも凄い綺麗な人でしたね。あの人が、華道部なんですね」

「まぁ派手な方ではありますね。あれが華道部部長の真行寺 由梨花です」

 大量にティッシュを使いながら、せとかが言う。
 せとみはどかっと椅子に座ると、扇でぱたぱたと己を煽いだ。

「ったく、あいつが活ける花からは、想像できない凶暴さだよなぁ」

「せとみ先輩のほうが詳しいんですね」

 せとかのこの状態では、活けた花など鑑賞している余裕はなさそうだ。

「あ、美人だからですか?」

 せとみは結構どんな女の子にも気安く声をかける。
 せとかと違って軽いイメージだ。

 そんなせとみが、あの美人を放っておくはずがない。
 が、せとみは思いっきり顔をしかめた。

「あれ、ほんとに美人?」

「え、せとみ先輩の好みじゃないんですか?」

 萌実は驚いた。
 好みとか以前に、あれは誰もが認める美人ではないだろうか。

「せとみは入学以来、ずっと真行寺 由梨花に追いかけられてるんですよ」

 ようやく症状が治まってきたせとかが、やっと椅子に座りながら言った。
 え、とまた驚き、萌実はせとみをまじまじ見た。
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