結構な腕前で!
「凄いじゃないですか! ていうか、何が不満なんです?」

「萌実ちゃんこそ、何を見て不満がないと思うのさ。あいつの攻撃を見ただろ? 容赦ないんだから」

「いやでも、魔と戦うんですよね? 私には攻撃を求めるじゃないですか」

「萌実ちゃんは、反射神経はいいけど、やっぱり女の子の攻撃だもん。ていうか、人の攻撃だよ。あいつは人の域を超えてるよ。まぁ武器が武器だからってのもあるかもだけど」

 確かに魔相手でもなかったのに、凄い攻撃だった。
 振袖と高下駄であれなら、ジャージだとどの程度の速さになるのだろう、とどうでもいいことを考える。

「あいつは目的のためには手段を問わない。邪魔者は徹底的に排除するから恐ろしい」

 ぞく、と萌実の背筋を冷たい汗が伝わった。

「いっそ清々しいとも言えますけどねぇ。その徹底ぶり、嫌いじゃないですが」

「お前はそうだろうな」

 密かに由梨花に同調するせとかに、せとみは不満そうに鼻を鳴らした。

「彼女の家は、うちと同様、華道の家元です。結構な旧家でしてね、そういった関係で、魔とも付き合いが濃いのでしょう」

 古い家には魔が多い、とは何となくイメージでわかるが、本当なのか。
 ちょっと疑いの目で見る萌実を無視し、せとかは説明を続ける。

「あそこに裏流派があるのは定かではありませんが、うちより武器には苦労しないでしょうしねぇ。うちはナイフと言えるものは、菓子きりぐらいですし、それとて小さいもので刃物ではありません。でも華道では鋏を使うし、剣山もあるし、花瓶だって投げれば十分凶器です」

「それは茶碗でも言えることでは?」

「茶碗は小さい。反対に、花瓶は例え一輪挿しでも首の部分を持って殴れるじゃないですか。大きな花瓶では致命傷を与えられます」

「そんな大きなものを振り回すことが不可能では?」

「彼女の力をナメてはいけません」

 萌実の突っ込みは、ばっさばっさと切られていく。
 どんだけ凶暴なんだろう、と引くほどの評価だ。
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