結構な腕前で!
「あなたは茶道部の新入部員だと言ったわね」

 そのままの位置で、文字通り上から由梨花が言う。
 階段を上がり切ることは許されないことなのだろうか、と思いつつ、萌実は階段途中で、こくりと頷いた。

「あの茶道部が、まともな部と思っているの?」

「思ってません」

 間髪入れずに答えた萌実に、由梨花は、ずいっと顔を寄せる。
 近付いた分、花の香りがきつくなる。
 これがせとかは駄目ということか。
 自然に花の香りがするなんて、女としては羨ましいと思うのに。

「それでもあの部でやっていけてるってこと? あなた、何らかの力があるってことかしら?」

「えっと……。そのようです」

 まだこの人がどういう人かわからない。
 下手に説明せず、聞かれたことだけに答える萌実を、由梨花は穴が開くほどじろじろ見た。
 腰に手を当てて、馬鹿にしたように上から顔を突き出すという態度がつくづく似合う人だ。

「う~ん……? そんな風にも見えないけどね」

 ひとしきりじぃ~っと萌実を眺め回した後、ふん、と盛大に鼻を鳴らして身体を戻す。
 そして、ばさ、と大きな扇を広げた。

「わたくし、守りの力は人一倍ですのよ。故に魔を見抜く力も秀でてますの。人の中のそういう力を見抜く力もね」

「はぁ、そうですか」

「そのわたくしが、あなたに何の力も見出せないというのは、どういうことかおわかり?」

「はぁ、おかしいですね」

 間抜けな萌実の返事に、由梨花の眉毛が吊り上がった。

「おかしい? あなた、わたくしがおかしいと仰るの?」

「いえ……あ、でも結果的にはそういうことになるかも」

 萌実の力については、せとかにお墨付きを頂いている。
 実際凄い力を使ってきたのだ。
 それが見えないということは、由梨花がおかしい、ということになろう。
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