結構な腕前で!
「いらっしゃ~い」

「袴用意しておきましたよ~」

「「お着替えはあちらのお部屋でどうぞ~」」

 部室に入るなり、はるかとはるみが出迎える。

「袴?」

 訝しげな顔をする萌実を、二人は時代劇にありがちな乱れ箱を用意して、奥の部屋へと促した。
 その二人も巫女のような袴姿だ。

「茶道部ですから。ユニフォームですね」

「着物は動きにくいですからね~」

「「袴のほうが、着付け楽ですしね~」」

 賑やかな二人に連れられ、小さな部屋に入った萌実は、とりあえず用意された単を手に取った。
 ちゃんと萌実用に用意したものらしく、新品だ。

「こういうのって、お金払わないとなんじゃ……」

 そういえば、茶道の道具など持っていない。
 あれも一式買わないといけないだろう。
 あんなもの、一体いくらぐらいするんだろう、と思っていると、はるかたちは明るく笑って手を振った。

「気にしないでいいですよ~」

「部費が莫大だって言ったでしょう~」

「「そういうの、ぜ~んぶ部費で十分賄えますから~」」

「え、そ、そうなんですか?」

 ちょっと驚いた。
 この部室自体、かなり立派だ。
 本格的な茶室を単なる部活動のためだけに建てるところといい、一体この部はどれだけ金持ちなんだか。

「この学校自体、部活動にはお金かけてますからねぇ」

「だから毎回のお菓子もいいものなのよ~」

「「お茶道具一式も、ちゃんと用意してますからご安心くださ~い」」

 綺麗なハモりを残して去って行く双子を見送り、とりあえず萌実は、用意された袴に着替えた。
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