結構な腕前で!
「わたくしにとって、この方は排除すべき者だもの」

「ええっ? 何で?」

「茶道と華道は元々仲が悪いものなのよ! それに加えて、茶道部には二人も新入部員が入ったというのに、華道部には今年もなしって!」

 その理由はどうだろう。
 そもそも茶道と華道が仲が悪いだなんて初耳だ。
 確かに似たようなイメージはあるが、全く違うものではないか。

「それに、この方はわたくしを茶道部に引き入れようとしたわ!」

 びし、と扇を突き付けられ、せとかは仰け反った。
 あまり風を起こされると花粉症が発症するのだろう。

「いやぁ、そりゃ魔に対応できる人を見つければ、勧誘したくなるのは自然なことでしょう?」

「だったらあなたが華道部に入ればいいではないの!」

「嫌ですよ。無理無理」

 ひらひらと、せとかが手を振る。
 そして、傍らの萌実を見た。

「けどまぁ、あのときは入学したてであなたのことも知りませんでしたし、いや拒否してくれて良かったですよ。あなたと茶室に籠ると、僕が死んでしまうかもしれません」

「花粉如きに撃退されるようでは、真行寺のお家は継げませんことよ!」

「継ぐ気もないです」

「わたくしだって、あなたには継いで欲しくありません!」

 何なのだろうか、この会話は。
 何で先輩が真行寺の家を継ぐとか言ってんの?

 わからないことだらけだが、口を挟むとややこしそうだ。
 とりあえず由梨花が黙るまでこちらも大人しくしておこう、と、萌実はだんまりを決め込んだ。

「あなたよりも、せとみ様のほうがよほど素敵ですものね!」

 ひと際大きく吠え、由梨花は、ざっと扇を振ると、ひらりと優雅に身を翻した。
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