結構な腕前で!
 反論できない。
 確かに萌実が茶道部に入ると決めたのは、せとかがいるからだ。
 力のこととか魔のことは、後から知った。

「どうせなら、あなたも華道部に入りなさいな。お花のほうが、何かと役に立つものよ」

「い、いきなり勧誘ですか。私には何の力もないっていうわりに、いいんですか?」

「あの茶道部でやっていけてるんですもの。多少のことでは驚かないでしょう?」

「お断りします! 先輩、男子部も作ったらどうです? 先輩狙いの人、多そうですし、部員も集まるんじゃないですか?」

 萌実が言うと、由梨花は、ぶるっと身体を震わせた。

「冗談言わないで。わたくしの聖域が、汗臭い男どもに踏み荒されるなんてとんでもない!」

「……せとみ先輩も男ですよ」

 本気でこんなこと言う人がいるんだ~、と半ば感心しながら言うと、由梨花は少しうっとりとした表情になった。

「あのお方を、そんじょそこらの汚い男と一緒にしないで頂戴」

 いきなり乙女な顔になる。

「せとみ様は爽やかだし、明るいし。頭は暗くて底意地の悪い片割れに劣るけど、魔に対する勇敢な態度も素晴らしいですわ」

 確かにせとみは明るい。
 せとかに比べれば、まぁ爽やかでもあるだろう。
 せとかの評価はともかく、魔にも喜んで突っ込んでいく。

 が、由梨花はその場面を本当にきちんと見たのだろうか。
 黒せとみは、輩に成り下がるのに。

「そんなお人に惹かれるのもわかりますけど、身の程というものがありますのよ! あなたよりもわたくしのほうが相応しい。そう思うでしょう?」

「ええ、それはもう」

「なら大人しく身を引いてくださるのね?」

 ふぅ、と息をつき、萌実はちらりと山のほうを見た。
 せとみの姿はない。
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