結構な腕前で!
 袴で元の茶室に戻ると、待ちかねていたように皆が腰を上げる。

「今日は道場解放日だから、道場に行くんだ」

 せとみが萌実の横に来て教えてくれる。
 前は制服だったが、今日はせとみも着物だ。
 女子は袴なのに、男子は着流しなんだな、と思いつつ、大人しく萌実は皆について茶室の裏手に回った。

 そこで、唖然とする。
 そこには体育館ほどもある建物があり、入り口には『茶道道場』と達筆で書かれた木の看板がかかっている。
 茶道道場って意味わからないんですけど!

「一週間に一回ね、ちゃちいものを、一気に片付けるんだ」

 そう言って、せとみは懐から扇を出した。

「萌実ちゃんも、何が一番自分に合ってるか、いろいろ試してみるといいよ」

「て、い、いえ、あの。まだ使ったこともないものばかりですし」

 茶道具一式も、さっき貰ったばかりだ。
 それ以前に、茶道具って道場で使うもんじゃないだろう!
 明らかに異様な雰囲気を醸し出す道場の前で、萌実は青くなりながら足を踏ん張った。

「大丈夫だよ。萌実ちゃんのことは、ちゃんと守るから」

 ウインクと共に、せとみが笑う。
 一瞬で萌実の魂は持って行かれた。

 が、そんな甘やかな空気は、がらら、という重苦しい音にぶち壊される。
 せとかが空気を読まずに、道場の戸を押し開けたのだ。

「行くぜっ!」

 さっきまでの爽やかさはどこへやら、どこか凶暴な表情になって、せとみが地を蹴った。
 戸を開けたせとかを飛び越えて、一気に中へと飛び込む。
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