結構な腕前で!
「けっ情けねぇ」

「せとみこそ、余裕あるとは言えないんですからね。とっとと終えて勉強しないと。てことで南野さん、さっさと始めましょう」

 文机に広げた参考書を前に、萌実は姿勢を正した。
 せとかが問題を解いていく。

「せとみも突っ立ってないで、勉強したらどうです。前のテストも散々だったじゃないですか。留年する気ですか」

「そしたら萌実ちゃんと同学年になるな」

 途端にへら、と笑って、せとみがどすんと萌実の横に座る。

「せとみ先輩には真行寺先輩がいるじゃないですか。あの人と組んだら、結構無敵なんじゃないですか? 魔と戦う力もあるんでしょ?」

 萌実が言うと、せとみは眉間に皺を刻んだ。
 何故かせとかも渋い顔をしているが。

「不思議なんですけど。何でせとみ先輩は、そんなに真行寺先輩を嫌うんです? せとみ先輩を慕うが故の強引さでしょ? 手に入れたらあの強引さも必要なくなるじゃないですか」

「萌実ちゃんは、俺に人身御供になれっての?」

「そうは言わないですけど。何でそこまで嫌がるのかな、と思って。あそこまで好いてくれるのって嬉しいもんじゃないですか?」

「嬉しいもんかよ」

 け、と馬鹿にしたように言い、せとみは参考書をぱらぱらめくる。
 そうは言いながらも、何となく落ち着かないようだ。

「ちょっと真剣に話し合ったらどうですか?」

「何だよ萌実ちゃん。何でそんなにあいつを推すの」

「だって真行寺先輩が真剣にせとみ先輩を好きなら、今の状況って結構辛いと思うんです」

 思わぬ萌実の言葉に、せとみはぎょっとしたように動きを止めた。

「先輩、きちんと彼女と話をしたことありますか?」

「きちんとったって、初めからあのテンションだったんだぜ」
< 194 / 397 >

この作品をシェア

pagetop