結構な腕前で!
「それはあくまでお前の場合だろ!」

「そうですかぁ? 南野さんはどうです? イトコに恋愛感情って湧きますか?」

 激昂するせとみとは対照的に、せとかは冷めた風に萌実に話を振った。
 こんな微妙にややこしそうな話に巻き込まないで欲しい、と思いながらも、萌実は曖昧に笑う。

「うんまぁ……。ないですねぇ」

 萌実にもイトコはいる。
 だが別に仲良しなわけでもないし、そもそもそんなに会ったこともない。
 年に一度、正月に会うぐらいだ。
 会ったところで何とも思わない。

「うちの場合は、別に目を惹く外見でもないからかもしれませんが」

「はるかだって、別にそんなに目を惹く外見とは思いませんよ」

「いや、それは先輩の好みの問題であって、結構人気あるかもですよ。現に土門くんだって……」

 言いかけ、萌実は口を噤んだ。
 明らかに機嫌のよろしくないせとみの前で言っていいものか。
 が、せとかは、ああ、と頷いた。

「そういえばそうでした。でもほら、はるかだってせとみには何の興味もないわけです。せとみの人気を考えれば、やはりイトコだからそういう対象外、と思うのが普通なのではないですか?」

「えっと、つまりはるか先輩も、端からせとみ先輩たちはそういう対象と見れない、と」

 慎重に言葉を選びながらも、内心ひやひやしながら言うと、またもせとかはこくりと頷く。

「イトコなんて、そもそもそういう対象外ですよ。ずーっと会ってなくて、十年ぶりとかに会ったとかならともかく、ずーっと一緒に育ったイトコなんてあり得ないです」

「……でも、ずっと一緒に育った幼馴染を好きになるとかいうのは、よくあるパターンじゃないですかね」

 せとみの気持ちをずばんずばんと切っていくせとかに、萌実はとりあえず微妙なフォローを入れる。
 せとかはちょっと考えて、小さく『へぇ』と呟いただけだった。
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