結構な腕前で!
「だったらここ最近の魔の出現率は何です! わたくしは一人なのですよ! 忙しくて花を活ける暇もないって、華道部の意味がありませんわ!」

「何ですって?」

 せとかが身を乗り出した。
 折角せとかに庇われていた萌実は、あっさり離されてしまう。

「どういうことです。魔の出現率が上がっている、ということですか?」

「そう言いましたでしょ! あんなに下界に魔が溢れるということは、こっちでの捕縛が滞っているからではないのですか?」

「そんなはずはないですけど……」

 納得できない顔で呟いたせとかが、ちらりと道場のほうを見た。

「確かに、何かこっちの魔が少ないな、とは思ってました。のわりに、空気は悪い」

 それは今花粉が入り込んでいるからではないか、とちらりと思ったが、せとかの表情から、そうではないらしい。

「確かに毎日道場を一掃しているわりには変ですね」

 言いつつせとかは、すっと立ち上がった。
 まさに『すっ』という擬音が正しい、美しい所作だ。
 立ち姿も綺麗、と萌実はうっとりした目を向ける。
 そんな萌実を、由梨花は妙なものを見る目で見た。

「あなたは本当に、こっちのほうがいいわけ?」

 部室を出ていくせとかの背に指を突きつけ、由梨花が言う。
 わぁ、と萌実は急いで立てた人差し指を口の前に当てる。

「そ、そんなことせとか先輩の前で、普通に言わないでくださいよ」

「あら、何故?」

「何故って。当然じゃないですか。自分が好いてるって宣言するようなものですよ」

「それのどこがいけないというの」

 萌実は口を噤んだ。
 この人とは根本的に違うのだ。

「隠してたら、いつまでたっても進展なしでしょう。時間の無駄ではなくて?」
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