結構な腕前で!
「言って受け入れて貰えなかったらすっぱり諦めるんだったら無駄な時間はないでしょうけど、受け入れて貰えるまでアタックするなら同じじゃないですか?」

「違うわね」

 由梨花の行動だって時間の無駄ではないか、と言ったつもりの萌実の言葉は、一瞬にして却下された。

「受け入れて貰えるまでといっても、全く可能性もないのに闇雲にアタックするのと、もう少しで落ちる、というのとでは違うでしょう」

「えーと……。真行寺先輩的には、せとみ先輩は後者である、と?」

「もちろん」

「……」

 その自信はどこから来るのだろう。
 胡乱な目で見ている萌実を、一旦外に出ていたせとかが呼んだ。

「何やってるんです。何となく、真行寺さんの訴えの元がわかったような気がしますよ」

 顔だけ部室に覗かせて手招きするせとかに、萌実はよく躾けられた犬よろしく駆け寄った。
 残念ながら呼ばれたのは萌実だけではなく、由梨花もだが。

 外を少し歩いて、道場の見える場所まで来た。
 そこにあるベンチに二人を促す。

「折角ですから野点でもしたいところですがねぇ。如何せん用意に時間がかかるので」

「わざわざわたくしを誘い出しておいて、こんなところに座らそうというの?」

 ぴ、と由梨花がベンチを指す。
 新しいものでもない屋外のベンチは、吹き曝しなだけに綺麗なものではない。
 山の中のベンチなど、こんなもんだろうが。

「お茶をお出ししようにも、部室にあなたを招き入れたら僕が辛いですからね。心配しなくても、そのベンチはたまに僕らが使ってるので、そう汚れてないと思いますよ」

「あなたたちが着ているものと同じと思わないで欲しいですけど。でもまぁいいですわ。それで? 何がわかったんですの?」

 懐から白いレースのハンカチを出すと、それを敷いて、由梨花はすとんとベンチに座った。
 せとかはその前の岩にもたれるように、軽く腰掛ける。
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