結構な腕前で!
「あ、南野さんは、こっちにどうぞ」

 由梨花の隣には座りにくいなぁ、と思っていた萌実に、せとかが自分の横を示して言う。
 うひょ、と浮かれ、萌実はいそいそとせとかの横についた。

「あまり彼女に引っ付かれて、花粉が南野さんにまで伝染したら困りますし」

 ぼそ、と言い、にこりと笑う。
 ああ、そういう理由ですか、と若干落胆した萌実だが、そうなるとせとかが困るというのはちょっと嬉しい。
 萌実が傍にいられなくなるのは困る、ということだ。
 例えカンフル用としても。

「で?」

 ベンチの中央にどっかと座り、高々と足を組んで、由梨花が言う。
 岩に軽く腰を掛けているだけのこちらのほうが、ベンチに座っている由梨花よりも目線は上のはずなのに、何故か見下ろされている感が否めない。
 凄い威圧感だ。

「あ、そうそう。えーとですね」

 ぽん、と手を叩いて、せとかはマイペースに話を進める。
 由梨花のこの威圧感を微塵も感じていないかのようなのほほんっぷりはさすがだ。

「まぁ、あの道場の様子をご覧頂ければわかるように」

 ひら、とせとかが、手を少し先に見える道場に向ける。
 どかーん、ばたーん、という凄まじい音が、僅かだが離れたここまで聞こえてくる。

「何か道場、壁がヤバくなってないですか?」

「ええ。屋根もちょっとヤバいですね」

「ちょっとあなたたち」

 呑気に道場の分析をする萌実とせとかに、由梨花が鋭い目を向けた。

「あそこはせとみ様の本拠地でしょう。あんなにボロくなっているのに、何を放置してますの」

「いや、ああしたのはせとみなんで」

「魔と戦ったが故でしょう!」

「そうですが、その戦い方が問題なんですよ」

 言いつつ、せとかは再度道場へと目をやった。
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