結構な腕前で!
「そうですね。結構せとみ先輩、大変みたいですし」

 道場がぼろぼろになるほど戦っているということは、結構な乱闘だ。
 一人で毎日大変だったのかも、と罪悪感に囚われていると、せとかがふるふると首を振った。

「いや、そんなことはないですよ。毎日掃除してますし、基本的に道場に集まるのは雑魚ですから、そう大変なわけはないんです。僕だって鬼じゃないですからね、一人で対応できないようなら任せませんよ」

 嘘だ、結構鬼ですよ、あなた、と心の中で突っ込みながら、萌実はせとかを窺った。

「せとみが荒れているのは、さっき言ったでしょう、苛々してるからです。南野さんも気付いたでしょう? 前の、僕がせとみの気持ちを言い当てたのが気に食わないんです」

「いや、言い当てたかどうかはわかりませんけど……」

「当たってますよ。南野さんも、イトコなんかに萌えないって言ったじゃないですか」

 えへん、と胸を張る。
 確かに私はそうですけど、世間一般そうだとも限らないんじゃないかとも思います、と、またも萌実は心の中で突っ込んでおく。

「なので、もういっそのこと、せとみは真行寺さんに任せます」

「いいんですか? ……いろいろ」

「……う~ん……。いろいろ……ねぇ」

 言ったものの、せとかも全面賛成ではないようだ。
 あの性格だし、花粉は振り撒く。

「でもまぁ、彼女の気持ちが本物なら、悪い話ではないですよ」

「そうですね、玉の輿」

「いや、そんな先の話ではなく」

 ばっさり斬り、せとかは岩から身体を起こして、ぽんぽんとお尻を叩いた。

「単に身近な人間からせとみの目を逸らせてくれれば、という意味です。彼女だって見てくれは悪くない。せとみだって嫌いなはずないんです」

「そうですか。まぁそうでしょうね」
< 204 / 397 >

この作品をシェア

pagetop