結構な腕前で!
 とにかくはるかは認められない、ということか。
 別にいいじゃん、一生ものの付き合いが続く間柄だとはいえ、大人になればそう会うこともないかもだし、と思うものの、家が隣だとそうもいかないのかもしれない。
 特殊任務だしなぁ、と思いつつ、萌実も身体を起こした。

「せとみは身近にいる人に惹かれる傾向があるようなんですよ。南野さんも気を付けてくださいよ」

「ええっ?」

 いきなり言われ、萌実は目を剥いてせとかを見た。
 そういえば、そんなことをせとみに言われたような。
 まさかそれを知っているのだろうか。

「まぁ南野さんがせとみを好いているのであれば、僕が口を出すことではないですけど」

「いやっ! それはないです!」

 慌てて即座に否定すると、せとかはくるりと振り向き、にこりと微笑んだ。

「そうですか。良かった」

 えっそれってどういう意味? と期待する萌実から視線を切り、せとかは再び道場へと視線を向ける。
 さっきよりも、大分静かだ。

「そうそう。さっきの、真行寺さんが怒鳴り込んできたそもそもの理由。下界に魔が多くなってるって言いましたね。あれなんですが」

 話を逸らすように、せとかが話題を変えた。
 くぅ、そんなことよりもさっきの発言の真意が聞きたいです、と思いながら、萌実はせとかの横顔を眺めた。

「せとみの、荒れた気が原因じゃないかと思うんですよね」

「荒れた気?」

「さっきまで凄い音がしてたでしょう? この数日で、道場そのものもあの通り」

 ひら、と手を道場に向ける。

「……確かに」
< 205 / 397 >

この作品をシェア

pagetop