結構な腕前で!
 せとかの言う通り、道場の痛みようは半端ない。
 元々結構無茶苦茶な攻撃はしていたが、それでもここ数日の痛み方は尋常ではないと思う。

 そもそも今は、いつもの道場解放よりも格段に少ない魔を相手にしているはずなのだ。
 なのに六人で大暴れしても(多分)大丈夫だった道場が、今やぼろぼろなのである。

「今までのガタが、一気に来たんですかねぇ」

「違いますって」

 ちちち、と指を振り、せとかは推理する名探偵のように眼鏡を押し上げた。
 そういえば最近のように部活動というよりはテスト勉強が主なときは、部活中であっても眼鏡のままだ。
 そうそう激しく戦うことがないからだろうか。

「せとみの悪い気が魔に影響してるんでしょう。元々魔というのは、悪い気を好みますから。退治したつもりが、逃れたものがいて、それが下界に降りているんじゃないでしょうか。せとみは壺の扱いが下手ですし」

「あー、なるほど。……ていうか、道場を壊すほどの魔が逃げたらヤバいんじゃないですか?」

「そうなんですよ。なので真行寺さんが怒っているのでしょう」

「……せとか先輩。だったらそもそもこの件を引き起こしたせとみ先輩に丸投げしようとか思ってません?」

 萌実が言うと、せとかは、ぱっと笑顔を向けた。
 くら、と笑顔にやられた萌実に、ぱちぱちと手を叩く。

「さすが南野さん。そこまで僕の行動を先読みできるとは、素晴らしいです。思考回路が一緒なのかな」

「いえいえそんな。恐れ多いです」

 せとかに褒められ、わけもわからず萌実は恐縮する。
 内容は全然大したことではないのだが。

「そうすれば、真行寺さんとの距離も、ぐっと近付くでしょうし。うむ、双方にとってこれほど手っ取り早くいい方法はない」

 はたしてせとみにとってもいい方法なんだろうか。
 ちょっと首を傾げた萌実だが、とりあえず動く気配のないせとかと一緒に、離れたところから道場を見つめた。
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