結構な腕前で!
「お前は学校が管轄だろうが! 山は管轄外! さっさと帰れよ」

 じわりと湧いた煙を、扇でしぱんと斬りながら、せとみが言った。

「帰りません! せとみ様が一人で対応できないほどの魔を任されているのでしょう? 根暗部長が非協力的なら、わたくしが協力して差し上げます」

「俺がこんなちゃちい魔に手こずってるって言いたいのかよ!」

「せとみ様に限って、そんなことはないでしょう! わたくしが目を付けたほどの力の持ち主なのですから!」

「後半は認めねぇが、わかってんならさっさと下に戻りやがれ!」

「だから帰りませんて! あなたにはわたくしが必要だって、わかったはずですわ!」

「何でそうなるんだー!」

 ぎゃーぎゃー言い合いながら、道場内をどたばたと走り回る二人を、足元に設けられた小窓から覗きながら、せとかと萌実は小さく息をついた。

「いいんですか? これ」

「いいんじゃないでしょうか。せとみの黒い心も、ぎゃーすか騒いでいるお陰で晴れているようですよ。悪かった空気が、少し和らいでいるようです」

「そう……ですね。大声出したらすっきりしますしね」

 根本的な解決にはならないだろうが、これだけぎゃーぎゃー叫んだ後なら、一人で悶々としていたのが馬鹿馬鹿しくなるものではないだろうか。

「こうやって見ると、何だかんだでお似合いかもしれませんね」

「いろいろ濃ゆい二人なので、あまり近付きたくはないですけどねぇ」

 せとかはそう言って、道場の正面に回った。
 重厚な扉を開け、せとかはぱんぱんと手を鳴らしながら、中の二人に呼びかける。

「はいはい。お二人はさっさと魔を退治してしまってくださいよ」
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