結構な腕前で!
「そんなことより、あまり乗り出さないでくださいよ。こっちはこれ以上下がれないんですから。ああ、それでですね、下界の魔は、せとみが倒した魔をきちんと処理してなかったからですよ」

 いっそ感心するほどマイペースに話を進めるせとかに、誰もが大人しくなる。
 何を言ってもこたえないのなら、もうこちらも黙ったほうがいい。
 由梨花もせとみも、こめかみをひくひくとひくつかせているが。

「せとみ。ここしばらくの鬱憤を晴らすように、魔を乱暴に打ち砕いていたでしょう。壺への回収も、おざなりだったんじゃないですか? 僕らは壺の扱いが下手なんですから、入れるときは注意してきちんと入れないと復活しますよ」

 不満そうにせとかを睨んでいたせとみは、口を尖らせてそっぽを向いた。
 図星のようだ。

「で、その壺から逃れた魔が、校舎に降りて行ったのです」

「あらあら、そういうことでしたの。せとみ様から逃れた魔なのでしたら、喜んで引き受けましたのに」

 ころっと態度を変え、由梨花が艶やかに微笑む。
 そんな由梨花をしばし眺め、せとかは、ごほんと意味ありげに咳払いした。

「せとみ。ちょっとは真行寺さんのことも考えてあげたらどうです?」

 いきなりな意見に、せとみが目を剥く。

「ここまで想ってくれる人、そういませんよ。魔に理解もありますし」

「なっ……何だよ、いきなりっ!」

「まぁっ! たまにはいいこと言うじゃないですの。暗いだけではなく、人を見る目はありますのねっ」

 狼狽えるせとみなどお構いなしに、由梨花が嬉しそうに、ずいずいっとにじり寄る。
 その分せとかは、じりじりとせとみから離れた。

「確かに僕は、人を見る目はあると思います」

 じりじりと由梨花から距離を取りながら、せとかがちらりと萌実を見る。
 せとか先輩の場合は、人を見るというよりは、力を見る、と言ったほうが正しいんじゃないかな、と内心思いながら、何となく萌実もせとかと共にせとみから距離を取った。
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