結構な腕前で!
「とにかくあなた、華道部に入りたいならちゃんとお花を扱えるようになりなさい」

「いえ、入りたくはないです」

「あなたがそうでも、今ここにいる以上は華道部員です。あなたをうちに来させることは、根暗部長の意向でしょう?」

 う、と萌実は口を噤んだ。
 せとかの顔を潰すことはできない。
 そんな大層なものでもないはずだが。

「さっきも言いましたけど、華道は身につけておいて損はないものよ。花嫁修業にもなりますしね」

「やりますっ!」

 まんまと『花嫁修業』に乗せられ、萌実はとりあえず、小さな平べったい花器を選んだ。

「花はなるべく花粉のないもので……ていうか先輩、これって花ですか?」

 いろいろ並べられた花々の中に、不思議なものを見つけた。
 咲き掛けの花の蕾が、うっすら靄のようなものに包まれている。

「あら、魔だわ」

「あ、え、そうなんですか」

 ちょっと考え、萌実はその手に取った魔付きの花を、壺に突っ込んだ。
 活けられている食虫植物が、喜々として群がる。
 その様子に、思い切り引いた。

「ていうか、よくそのまま何もしないで壺まで持って行けたわね」

 不意に言われ、萌実はきょとんとしながら振り向いた。

「何もって? 何かしないといけなかったんですか?」

 魔を壺に入れるのに、何ら儀式的なものはなかったと思う。
 そもそもそんなことしてる暇はないだろう、と思っていると、由梨花が萌実の手を掴んだ。
 そのまま、じっと手を見る。

「素手だわよね」

「ええ。え? 先輩は手袋でもしてるんですか?」

 感触からしても、そんなことはないはずだが。
 案の定、由梨花は、ぱ、と掴んでいた手を離した。

「そんなわけないでしょう。でも魔のついたものを不用意に持つなんて。根暗部長もせとみ様も、素手では絶対に魔に触れないはずですわ」
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