結構な腕前で!
「……もしかして、あなたが火山を噴火させる起爆剤ってこと?」

 ふと気付いたように、由梨花が呟いた。
 顎に手を当ててしばし悩み、随分経ってからちらりと萌実を見る。

 そのまましばし、じーーっと萌実を見た。
 美人に凝視されると同性でも照れる。
 萌実が居心地悪くもじもじしだした頃、ようやく由梨花が視線を落とした。

「なるほどね。わかりにくい二人ですわね……」

 呟き、最後に残ったユリを活ける。
 途端に花器の中が華やかになった。

「内在する力はわかりにくいものなんですの。なるほど、上手く使えば事前察知もできるようになるかもしれませんわね」

 そう言うや、由梨花は今しがた活けた花を、ずい、と花器ごと萌実のほうに向けた。

「さ、これをお手本に、活けてごらんなさい」

 いきなり実践かよ、と思ったが、こういうものは感性の問題なので、言葉で説明してどうこうするものではないのだろう。
 じ、とお手本を見、見よう見まねで活けていく。

「……こんなもんですかね」

 初めてにしては上手くできた。
 ……ような気がする。
 素人にはよくわからないが。

 由梨花はまじまじと萌実の活けた花を見、ふぅ、とため息をつく。

「余裕がないですわねぇ」

「余裕?」

「心に余裕がないのですわ。早く状況を脱したい、とでも思ってるんじゃなくて?」

 うお、と萌実は由梨花を見た。
 何だこの心理カウンセラー。

「あなたはほんとに華道のことを知らないのねぇ。活けた花は、そのまま心の現れなんですのよ。華道に限らず、茶道とかもお茶に心が現れますけどもね」

「ええっ! じゃあ私の気持ち、せとか先輩にダダ漏れ?」

「あなたの場合はお茶を見なくてもダダ漏れですわよ。もしかして自覚ないのかしら」

「そんなっ! だってせとか先輩、そんなこと一言も……」

「気付いていて触れない、ということは、あなたには何の興味もないということではなくて?」

 ずばんと萌実の心を砕き、由梨花は再び生け花に視線を戻した。
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