結構な腕前で!
 さてその頃、山の上では。

「馬鹿ねぇ、せとか。何で萌実さんを華道部なんかに? どうせなら原因を作ったせとみを出せばいいじゃない。そうすりゃ真行寺のお嬢様もウハウハだし、せとかも労せずライバルを駆除できるんじゃないの?」

 茶碗にお湯を注ぐせとかの前に座ったはるみが、ちらりと小さな窓から見える道場に目をやって言う。

「駄目ですよ。せとみは裏の部長ですから。魔対応のほうは、せとみ担当なんですからね。裏部長がいなくなったら、ここの魔が溢れかえります」

「せとかだって対応力は同じでしょ」

「違います。僕はあんなに体力はない」

「どうかしらね」

 せとかは体力がないというよりは、単にやる気がないだけなのでは。
 道場解放日も、せとみのように喜々として魔を祓っていくことはない。
 自分の負担をいかに軽く済ませるか、というところは徹底している。
 せとかに言わすと、せとみは無駄な動きが多すぎるらしい。

「ま、その合理性のなせる業が、あの爆発的な力の放出なんでしょうけど」

 そう考えると、力というのは持ち主(?)の性格に大きく左右されるのだな、と思う。

「ていうか、そういう話じゃないのよ。いいの? せとか。萌実さんを華道部にやっちゃって」

「やったわけではないです。修行のため、一時貸与」

「真行寺のお嬢について、修行になると思うの?」

「忍耐力はつきそうです」

「花粉もつくわよ。いいの?」

「う~ん。一か月程度であれば、彼女のように落ちないほどは染みつかないでしょう」

「あら。やっぱり萌実さんに近付けなくなるのは嫌なのね」

「そうですね。折角見つけたカンフル剤ですから。近付けなくなったら、それも使えない」

「それだけ?」

 はるみの問いに、せとかは少し首を傾げた。
 それだけではない、という意味か、単に『他に何が?』という意味か。

「さぁ、お茶が入りました。道場の連中を呼んできてください」

 せとかに言われ、はるみは一つ息をつくと、腰を上げた。
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