結構な腕前で!
第二十四章
 華道部に仮入部して早一週間。
 由梨花曰く、まだ萌実の生け花には焦りがあるらしい。

「そりゃそうですよ。私はこんなことしてないで、さっさと茶道部に帰りたいんです」

「まぁっ! こんなこととは何ですっ。大体あなた、こんなに焦ってたら肝心の魔を察知する能力も磨けませんわよ」

「……そうなんですか?」

「当たり前でしょう。何かを事前に察知することは、魔でなくても神経を集中する必要があるってことぐらい、わかりそうなものですけど?」

 思いっきり馬鹿にした目で見、由梨花は長い髪をばさ、と後ろに跳ね上げた。

「自分ではそこまで焦ってるつもりはないです。焦って花を活けたって、この後茶道部に行くわけでもなし」

「でも早く帰りたいって気持ちがばっちり出てますのよ」

 こことか、こことか、と萌実の活けた花を指して言うが、当然ながらセンスもない素人にはわかるはずもない。

「まずは落ち着いて穏やかなお花を活けられるようにならなければね」

「そんな悠長にしていて……」

「お黙り。あなたの使命は、魔を事前に察知できるようになることでしょう。それができなければ、永遠に茶道部には帰れないってことなのですわよ」

 ほほほほ、と魔女のように笑い、由梨花は花器に美しく花を活けていく。
 その様子をじっと見ながら、萌実はなるほど、と納得した。

 花を活けている由梨花の周りの空気は穏やかだ。
 余裕がある、というのだろうか。

「こういう風に余裕しゃくしゃくであればね……」

 花を活けながら、由梨花の目が横にすっと滑った。
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