結構な腕前で!
「さっきの攻撃だって、特に後ろを振り向かないまま攻撃しましたよね? てことは、魔の気配を感じ取ったってことじゃないですか?」

「そうね。そりゃ、それぐらいできないと対応できないでしょう? まさかあなた、気配も全く感知できないの?」

 そう言われると微妙だ。
 今まで散々魔に対応してはきたが、はたして気配を察知してきただろうか。
 目に見えてからだったようにも思う。

「集中力が足りない証拠ですわね~。座禅のほうがよろしいんじゃなくて」

「確かに何かやってたら、そっちに気を取られてしまうし。お花活けてたら、いろいろ考えるし」

「心のままに活けるってことができれば問題なしですけどね」

「考えなしに活けるってことですか」

「言い方が悪い。考えなくてもきちんと選んだお花に合うよう活けられるってこと」

「それぐらい余裕があれば、他に神経を集中してても活けられるということですか」

「まぁそうね。そこまで集中してなくても、わたくしたちのように、それなりの力がある者からすれば、それこそ湧いた瞬間にわかるものですけどね」

 そういうものか。
 ある程度の力があれば、魔に対する感覚も優れている、というのであれば、萌実は誰より早く魔を察知できるはずだ。
 何せ萌実の力はせとかのお墨付きなのだから。

「じゃあとりあえず、心静かに集中してみます」

 そう言って、萌実は目を閉じた。
 まさに座禅のように、静かに心を落ち着ける。

 まずは目を瞑っていても魔がわかるように、つまり魔の気配を掴むことができるようにならなければ。
 早く茶道部に帰りたい。
 部活がなかったら、せとか先輩に会うこともできない。

 先輩、ちょっとは寂しがってくれてるかなぁ。
 いやいや、こんなことを考えてたら、そっちに気持ちが持って行かれて他に気が回らない。
 集中集中……。

 凡人は目を閉じると余計にいろいろ考えてしまうものだ。
 気が散ってしょうがない。

 魔、魔……と呪文のように唱えながら、萌実は頑張って無理やり思考を魔でいっぱいにするのであった。
< 228 / 397 >

この作品をシェア

pagetop