結構な腕前で!
「まぁよろしいわ。あなたとの茶番に付き合っている暇は、このわたくしにはないのですから」

 僕もです、と喉まで出かかった言葉を、せとかはぐっと呑み込んだ。
 あまり思ったことを何でも口に出していると、いつまでたっても本題に入らない。
 萌実の様子も聞けないし、何より今現在じわじわせとかを蝕んでいる花粉から逃れるためには、さっさと本題に入らねば。

「あの子はうちに何をしに来ているのです! 毎日昼寝されちゃ、堪らないのですけど?」

 び、と指を突きつける由梨花に仰け反りながら、せとかは、ん? と呟いた。

「……昼寝?」

「お花を触ったのは初めの三日ほど。あとはひたすらおねんねなのですけど?」

 ぽかん、と由梨花を見ていたせとかが、う~む、と首を傾げながら、ちらりと北校舎のほうに目をやった。

「おかしいですねぇ。よほど華道部が退屈だったんでしょうか」

「お黙り!!」

 きーっと由梨花がせとかに掴みかかろうとしたとき、アイスの袋を下げたせとみが現れた。
 由梨花の姿を認め、げ、という顔をする。
 が、アレルギー持ちのせとかが襲われているのは見捨てられないらしく、嫌々ながらも近付いてくる。

「おい、どうしたんだよ」

「あら、せとみ様のほうから声をかけてくださるなんて……」

「いや、南野さんが華道部はやっぱりつまらないらしく、すっかり不良になってるようなんですよ」

 一瞬で満面の笑みになった由梨花の言葉に被って、せとかがせとみに説明する。
 は? とせとみが顔をしかめた。

「萌実ちゃんが不良に?」

「部活を放棄して昼寝三昧だそうです」

 合ってるんだか間違ってるんだかわからない理解の仕方をし、せとかは、困りましたねぇ、と息をついた。
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