結構な腕前で!
「様子を見に行きたいところですが……」

 華道部の部室に入るのはキツイ、とせとかは悩み、由梨花の部に自ら行くのはキツイ、とせとみも頭を悩ませた。

「しょうがない。せとみ、お願いします」

「う……。やっぱりそうなるよな」

 酷いアレルギー体質のせとかよりも、やはりその点は何ともないせとみのほうが華道部へは行きやすい。
 個人的な気持ちさえ我慢すれば。
 それに魔に絡むことでもあるので、裏部長が出張るべきでもあるわけだ。

「まあぁっ! とうとうせとみ様が、わたくしの城にいらっしゃるのね?」

 さっきまでの威圧感はどこへやら、この上なく上機嫌になり、由梨花は満面の笑みでせとみを促す。
 せとかが、こそりとせとみに耳打ちした。

「ちょっとチャンスです。無理に興味を持てとは言いませんが、やっぱり少し、彼女のことを冷静に見ても悪くないと思いますよ」

「……お前は、またっ……」

「落ち着きなさい。性格はともかく、彼女の力は魅力的でしょう? お金もありますし、デメリットばかりではないと思うんです」

 ぼそぼそと言うせとかに、せとみは口を噤んだ。

「……お前のそういうところ、ちょっと恐ろしいぜ」

「僕はせとみのように純粋ではないので」

 きらりと眼鏡を光らせて、さらりと言う。
 何気に腹黒さはせとかのほうが上を行くらしい。

「お前はあいつの対象がお前だったら、あいつのことを考えるってことか?」

「無理ですよ。命の危険を冒すほどの人ではありません」

 ばっさりと斬る。
 単にアレルギーを持っているから、という理由だけとは思えないほどの物言いだ。

「まぁ彼女のことは、今はどうでもいいですよ。とりあえず南野さんの様子を見てきてください」

「あ、ああ。そういえばそうだな」

 うっかり本来の目的を忘れるところだった。
 そもそも好きこのんで由梨花の元へ出向くことなどないのだ、と思いながら、せとみは前方で目を輝かせている由梨花について北校舎へと向かった。
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