結構な腕前で!
「で、萌実ちゃんはつまらないから、この部活の時間を昼寝に費やしてるってこと?」

 せとみの問いに、ん? と萌実は首を傾げた。
 次いで、前に座る由梨花の顔を見る。
 明らかに不満そうだ。

「……あ、いやいや。あの、元々私は魔の気配を事前に察知できるようになるために、華道部に奉公に出されたわけですけども、まずは基本的な魔の気配ってものがわかるようにならないとってことで、集中するようにしてたんですよ。でも他のことしてたら、どうしても気が散るし、じゃあ魔に集中することから始めようと思って、ひたすら魔に集中してたら、その、いつの間にか夢の中に……」

 焦って説明する萌実に、ぶは、とせとみが吹き出した。

「なるほど。ていうか凄いね、萌実ちゃん。よくこの(鬼)部長の前で居眠りできるもんだ」

「い、いえ。何か……魔、魔、て考えてたら、いつの間にか……」

 すみません、と萌実はとりあえず由梨花に頭を下げた。
 確かに華道部に入って華道を疎かにするなど、失礼極まりないだろう。
 しかも二人だけの部活で。

「気配を察知するために来たのであれば、そっちを優先するのもわかりますけどね。でも、毎回寝てたらそれも無駄になりますわよ?」

 息をついて、由梨花が言う。
 ごもっともです、と頭を垂れ、萌実はひたすら反省した。

「でも、そんなに毎日寝てるってことは、ここしばらくはこっちの魔も大人しくなってるってことか?」

 せとみの問いに、由梨花も、ぽん、と手を叩いた。

「そういえばそうですわね。ちょっと前よりもマシですわ。あるべき姿に戻った、といいますか」

 ちょっとせとみが微妙な顔になった。
 山の魔が漏れていたのはせとみのせいだ。
 せとかに、はるかを諦めるよう言われ、さらにはるか自身も土門と付き合い、苛々していた。

 その苛々を魔にぶつけていたので、後処理もいい加減になり、結果取りこぼしがあったわけだが、それが元に戻ったということは、せとみの苛々が治まった、ということだ。
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