結構な腕前で!
 振袖の袖を振り回せば、長い袖が風を孕んで結構な音がする。

「そういえば。それにあの植物が魔に群がるときも、結構わさわさ言いますよね」

 萌実が床の間の食虫植物を指して言う。
 せとみの目がそちらに向いた。

「何、あれ」

「先輩のペットです」

「へぇ?」

 不思議そうに、せとみが壺に近付く。
 それを由梨花が、慌てて止めた。

「せとみ様っ! 危ないですわよ。それに触らないで」

「危ない?」

「食われますわよ」

 私のときは、身をもって知れ、と言ったくせに、と萌実は不満そうにその様子を見た。
 ドSな由梨花も、好きな人には甘いのか。

「つか、ただの苛めっ子じゃん」

 思わず口をついて文句が出る。
 何についての文句なのか瞬時に理解した由梨花が、ぎ、と萌実を睨んだ。

 せとみはしばらく、じーっと食虫植物を見ていたが、傍に活けてあった花を一つ引っこ抜くと、それで軽く食虫植物を叩いた。
 次の瞬間、わさわさっとせとみの持っていた花が食べられる。

「おおっ。すげー」

 引くでもなく、せとみは子供のようにはしゃぐ。
 やっぱりこの二人は気が合うのでは。

「これ、壺から生えてるってことは、こいつら自体も壺ってことか?」

 葉に触れないよう注意しながら、せとみは立ち上がって上からまじまじと床の間の壺を観察した。
 そういえば、魔を回収する壺は普通の壺ではない。
 あの中がどうなっているのかはよく知らないが、おそらく異空間に繋がっているのだと思う。

 現に以前萌実が手を突っ込んだときは、見かけより明らかに中の空間は広かった。
 一体あの食虫植物は、どのようにして活けられているのだろう。
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