結構な腕前で!
「まぁせとみ様、生えてるだなんて。それも一応生け花ですわよ。活けてあるんですの」

 おほほほ、と由梨花が笑う。

「え、だって無理じゃね? 壺の中は空間だろ?」

 上から覗いてみても、壺の中までは暗くて見えない。

「その魔を食べる植物と、それを空間に活ける能力が、真行寺流裏生け花ですの」

 出た、裏流派。
 やっぱりあるんだ、と若干萌実は打ちのめされた。

 まさかとは思うが、そういう伝統文化的なものには全て裏があるのだろうか。
 昔からある分、魑魅魍魎的なものも引っ付いていそう、と言えばそうかもしれない。

「なるほど、そうか。そういう能力が作法にあるってことは、そっちのほうが詳しそうだな」

 珍しく、せとみが真剣な顔で言う。

「空間を作り出す作法ってものがありまして、それとこの子たちを融合させることで、魔を帰す壺を作るってことかしらね」

 これまた珍しく、ふんふん、とせとみが由梨花の説明を聞く。
 何か気になることがあるらしい。
 少し考え、せとみは萌実をじっと見た。

「萌実ちゃんは、寝てる間って覚えてる?」

「え?」

「普通は居眠り程度だったら、半分起きてる状態だろ? 周りのことも、多少はわかってたりするんだ」

 物音や周りの声などは、大抵聞こえているはず。
 だが萌実は、うーん、と考えた後、首を振った。

「言われてみれば、さっぱり。真行寺先輩に叩き起こされるまで、全く記憶がございません」

「夢は?」

「……見ません。ほんと、何にも」
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