結構な腕前で!
着替えを済ませて茶道部の部室に入ると、嗅ぎ慣れたお茶の香りが身体を包む。
一か月も経っていないのに懐かしい。
「あ~、お茶の香りはいいですねぇ」
「そうでしょう。まぁ華道部と違って、毎日いろいろな香りを楽しむことはありませんが」
にこにこと言い、せとかは膝先に、とん、と壺を置いた。
「いつもは、はるかとはるみが壺を作るんですけどね。南野さん、やってみてください」
ずい、と壺を萌実のほうに滑らせる。
ちら、と萌実は、横のはるみを見た。
壺の作り方など習っていない。
「大丈夫よぉ。中に手を突っ込んで掻き回すだけ」
はるみが軽く言う。
そういえば、前にもせとかに言われて壺の中身を掻き混ぜたことがある。
壺強化とか言っていたが、あれのことか。
萌実は壺を手に取ると、片手を中に突っ込んだ。
その瞬間、壺の中の空気が変わる。
「えーと、どれぐらい掻き混ぜればいいんですかね」
くるくると手を回しながら萌実が聞くと、はるみが、ひょい、と横から壺を覗き込んだ。
「う~ん、多分もういいと思う。魔を入れてみないとわからないんだけど」
きょろきょろ、と周りを見回す。
魔を探しているのだろうが、茶室の中に不穏な空気はない。
しゅんしゅんとお湯の沸く音だけが響く茶室は、むしろ心が洗われるようだ。
しばらくしてから、ようやくせとかが柄杓を手に取り、茶碗に湯を入れた。
ゆっくりと作法に則りお茶を点てる。
「……どうぞ」
結構な時間をかけて点てたお茶が、萌実の前に置かれる。
「いただきます」
一口飲むと、ほろ苦い味が口に広がる。
ああ、先輩の点てたお茶を飲むのも久しぶり、としみじみ思いながら目を上げると、せとかとばっちり目が合った。
萌実と目が合うと、せとかはにこりと笑い、次いで、きょろ、と先のはるみのように部屋の中を見回した。
一か月も経っていないのに懐かしい。
「あ~、お茶の香りはいいですねぇ」
「そうでしょう。まぁ華道部と違って、毎日いろいろな香りを楽しむことはありませんが」
にこにこと言い、せとかは膝先に、とん、と壺を置いた。
「いつもは、はるかとはるみが壺を作るんですけどね。南野さん、やってみてください」
ずい、と壺を萌実のほうに滑らせる。
ちら、と萌実は、横のはるみを見た。
壺の作り方など習っていない。
「大丈夫よぉ。中に手を突っ込んで掻き回すだけ」
はるみが軽く言う。
そういえば、前にもせとかに言われて壺の中身を掻き混ぜたことがある。
壺強化とか言っていたが、あれのことか。
萌実は壺を手に取ると、片手を中に突っ込んだ。
その瞬間、壺の中の空気が変わる。
「えーと、どれぐらい掻き混ぜればいいんですかね」
くるくると手を回しながら萌実が聞くと、はるみが、ひょい、と横から壺を覗き込んだ。
「う~ん、多分もういいと思う。魔を入れてみないとわからないんだけど」
きょろきょろ、と周りを見回す。
魔を探しているのだろうが、茶室の中に不穏な空気はない。
しゅんしゅんとお湯の沸く音だけが響く茶室は、むしろ心が洗われるようだ。
しばらくしてから、ようやくせとかが柄杓を手に取り、茶碗に湯を入れた。
ゆっくりと作法に則りお茶を点てる。
「……どうぞ」
結構な時間をかけて点てたお茶が、萌実の前に置かれる。
「いただきます」
一口飲むと、ほろ苦い味が口に広がる。
ああ、先輩の点てたお茶を飲むのも久しぶり、としみじみ思いながら目を上げると、せとかとばっちり目が合った。
萌実と目が合うと、せとかはにこりと笑い、次いで、きょろ、と先のはるみのように部屋の中を見回した。