結構な腕前で!
「うん、凄いですね」

 不意打ち笑顔にくらくらしていた萌実に気付くでもなく、せとかはぽつりと呟くと、柄杓をくるりと回した。

「部屋の中の空気が、いつもより綺麗です」

「そうね。魔の出る気配も全然ないわ」

 はるみもきょろきょろと部屋を見回している。
 そしてさっき萌実が作った壺を覗き込む。

「萌実さんが作ったら、それなりに強力にはなるんだろうけど。でも、それにしても凄いわね? 壺から力が溢れてる」

「やはりね」

 はるみとせとかが何かに納得していると、不意にどたどたと足音が聞こえてきた。
 そしてすぐに、すぱんと障子が開く。

「聞いて驚け! 今日の茶菓子は成田屋のきんつばだぜ!」

 袋を持った手を突き出し、せとみが満面の笑みで入ってくる。

「でかしました。さ、お座んなさい」

 いそいそとせとみを促し、せとかは早速お茶を点てる。
 その間に、せとみは菓子鉢にきんつばを入れて行った。

「はい、どうぞ」

 でん、と萌実の前に菓子鉢が置かれる。
 見たところきんつばは六つ。
 なのだが、鉢から三つははみ出しそうになっている。

 こりゃまたでかいものを、と思いつつ、萌実は箸を取った。
 ぎっしりあんこのきんつばは、箸で持つと重たくて指が攣りそうだ。

「で? どーだったのよ、萌実ちゃんの成果は」

 せとかから茶碗を受け取り、せとみが聞く。
 胡坐をかいてはいるものの、一応茶道の家元の息子であり茶道部の部長(裏だけど)であるだけに、飲む作法は完璧だ。

---忘れそうだけど、せとみ先輩だってちゃんとした茶道部員なんだよね---

 条件はせとかと同じなのだ。
 双子だけあり、顔だって一緒。
 ただせとみのほうが明るく人当たりもいい。
 そこは大きく違うところだが。
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