結構な腕前で!
---だけど、よく考えたらどっちも何を考えてるのかわからないよね---

 せとかは普段ぼーっとしているので、見るからに何を考えているのかわからない。
 せとみのほうは、せとかとは正反対に軽い感じで本心がわからない。
 そう考えると、やっぱり二人は似ているのだな、とつくづく思う。

「魔が出ないので、確信は持てませんが、でもおそらく、間違いないでしょう」

 手の平を覆うぐらいのきんつばを三口ほどで食べたせとかが、何事もなかったように言う。
 そんな大口を開けた風もないのに、一体あのでかいきんつばは、どこに吸い込まれたのだろうか。

「ここの魔は、強い分下よりも警戒心が強いってことか? 下はそれでも、ちょいちょい出てたようだぜ」

「そうですねぇ。南野さんが寝てないからでしょうか」

 ん、と萌実が今まで格闘していたきんつばから目を上げる。
 せとかとせとみにじっと見られていることに初めて気付き、萌実は危うく喉を詰まらせそうになった。

「わ、私、そんないつでも寝たりしませんよ」

「そうですよね。今は、全く眠たくありませんか?」

 せとかに聞かれ、こっくりと萌実が頷く。
 憧れの先輩の前で居眠りなどできようか。

「でも、今はお茶菓子を食べているからともかく、さっきまでは南野さんも、特に何をするでもなかったでしょう? その点では、華道部と変わりません」

「いえ、全然変わりますよ」

 好きな人の前というのと、好きでもない、しかも親しくもない同性の前とでは心の感じ方が全く違う。
 が、当然せとかの言っているのは、そういうことではない。

「そうか。じゃあ南野さん、お茶菓子食べたら、ここで瞑想してみましょう」

「ええっ! 無理ですよ」

 好きな人が目の前にいるのに、魔なんぞに集中できようか。
 声が聞こえただけで、気が散ってしまうだろう。
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