結構な腕前で!
「大丈夫だよ。魔が出たら、ちゃんと守ってあげるから」

 きらきらとせとみが言うが、萌実は冷めた目を向ける。
 せとみの言うことを真に受けると、ろくなことがない。

「それに、ここの魔は少なくとも下より強いですから、気配もより濃く感じるかもです。華道部で、ちょっとは感覚が研ぎ澄まされたかもしれませんし、確認の意味でもね。せとみだけでなく、僕もいるから大丈夫ですよ」

 にこ、とせとかに笑いかけられ、まんまと萌実は頷いた。
 ようやくきんつばを食べ終わり、深呼吸して目を閉じる。
 しん、と沈黙が落ちた。

 しばらくすると、ゆらり、と床の間の掛け軸が揺れた。
 す、とせとみが扇を構える。

「とぅっ!」

 気合いと共にせとみの手から飛んだ扇は、掛け軸がめくれた途端に湧いた煙に突き刺さる。
 たたた、とはるみが壺を手に、床の間に走った。

「お見事」

 ぱらぱらと崩れる魔を壺に受ける。
 そして、ちらりと萌実を見た。
 目が合う。

「あら。起きてた?」

「寝れませんて」

 当たり前のように言ってみるが、どうも説得力に欠ける。
 ちょっと恥ずかしく思う萌実だが、せとかのほうはそうでもないようだ。
 じぃ、と萌実を見た後、うん、と頷いた。

「やっぱりね。ここでは全然眠くならないし、魔が出たら、というか、誰かが動いたらすぐにわかるでしょう?」

「え? ええ……」

「華道部と違ってお茶菓子を食べた後なのに、眠くならない。まぁこれっぽっちじゃお腹も大きくならないのはわかりますが」

「いや、そこはわからないでしょ」

 横からはるみが突っ込む。
 が、せとかは綺麗にスルーした。
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