結構な腕前で!
 庶民には落ち着かない豪華黒塗りリムジンで、一行は真行寺家へと向かった。
 トランクでは痣だらけの酔いまくりと由梨花が言った通り、少し走ると車はがこんがこんと揺れ続ける。
 リムジンの高級ソファが衝撃を吸収してくれても感じるほどだ。

「由梨花、一体どこに住んでるの」

 これだけ車が揺れるということは、道路が舗装されていないということだ。
 ぴったりと閉まったカーテンから覗いてみると、一面の緑。
 山を上がっているようだ。

「いつになったらお屋敷につくのよ」

 見たところ、周りには家はおろか建物すらない。
 が、由梨花は馬鹿にしたような目ではるみを見た。

「もうついてますわよ。さっき門を潜ったでしょう」

 あれ、そうだっけ、と思い返すと、確かに随分前に大きな門を潜ったような。

「いやいや。あれって大分前じゃない。あれからどんだけ走ってんのよ。それでもお家が見えないっておかしくない?」

「真行寺家を、門から徒歩十五秒で玄関につくようなお家と一緒にしないでくださる?」

 当然のように言う。
 徒歩十五秒でも結構遠いように思うのだが。

「それにしたって……」

 おそらくこの舗装されていない道に入ってからが、真行寺家の敷地ということなのだろう。
 まさに絵に描いたようなお嬢様だ。

「心配しなくても、もうすぐですわよ」

 顎で、由梨花が前を指す。
 こういう態度がつくづく似合う。

 恐ろしく尊大な由梨花を称えるように、ぱ、と前方が明るくなった。
 ざ、と視界が開け、広大な敷地に、どーんと立派な日本家屋が現れる。

「おお……。すげぇ」

 思わずせとみも声を上げた。
 これまた大きな門の前に、リムジンが横付けされる。
 上は上で、また門があるのがまた凄い。
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